デロイト トーマツ グループは、広告活動を行っている従業員規模5,000人以上の企業を対象とした「広告取引に関する広告主実態調査2020」を発表します。この調査は、近年、市場が拡大するデジタル広告について、その仕組みに関する信頼性の向上に資するために、デジタル広告不正および個人情報保護に関する広告主の意識と対応実態の把握を目的としています。デジタル広告市場が拡大しデジタル広告の信頼性向上が求められている中、広告の配信技術の高度化とブラックボックス化によって広告主が意図しない不正や問題が発生しています。広告主や広告代理店はデジタル広告不正や、個人情報保護法の改正について関心を高め、適宜対応していくことが求められています。本調査を通じて、現状では、デジタル広告不正への理解が不十分であり、対策の必要性を認識しているものの、対策に取り組む企業はまだ少数であることがわかりました。また、改正個人情報保護法によるサードパーティークッキー規制についての内容率認知もまだ低く、デジタル広告の環境変化やそれらに伴う対応が不十分であるといった課題が浮き彫りになりました。

■主な調査結果
コロナ下においても全体の7割でデジタル広告投資費用が増加
回答者の7割が1年前に比べてデジタル広告投資費用が増加したと回答しており、コロナ下においてもデジタル広告投資の増加がみられました。また、年間広告予算が100億円以上という大手広告主企業が半数以上、そのうち300億円以上の企業も約4割となり、デジタル広告への予算配分が進んでいることがうかがえます。

64.5%の広告主企業がデジタル広告不正という言葉を認知するも、内容理解は半数以下
デジタル広告不正についての認知度について確認したところ、「どんな不正なのか、その内容までよく知っていた」(10.5%)、「どんな不正なのか、概略は知っていた」(30.0%)、「その内容は知らないが、言葉は聞いたことはあった」(24.0%)となり、64.5%が認知しているものの、内容を理解している回答者は全体の40.5%に留まりました(図1)。一方でデジタル広告不正という言葉を認知している回答者のうち、その9割が対策の必要性があると回答しており、対策の重要性がうかがえました。

最も対策意識が高いのは「ブランドセーフティ問題」、対策に取り組む企業は予定も含め3割に留まる
デジタル広告不正の中で対策の必要性を感じたものについては、不適切なサイトやコンテンツに広告が掲載されるといった「ブランドセーフティ問題」(81.1%)が最も多く、次いでbotなどによる不正クリックといった「アドフラウド問題」(68.3%)、配信された広告が視聴可能な状態で表示されないといった「ビューアビリティ問題」(60.4%)となりました。デジタル広告不正問題の中でも、ブランド価値・企業イメージ毀損に直結するブランドセーフティへの対策意識が高い結果となりました。一方でデジタル広告不正対策にどの程度取り組んでいるかを確認したところ、取り組む企業はまだ少数であり、今後の取り組み予定を含めても全体の3割程度に留まっています(図2)。

管理系部門所属者の関与意識が高く、企業リスクとしての認識が高まっている
経営企画、事業企画、内部監査・リスク管理、経理・財務部門所属者に対し、デジタル広告不正問題に主体的に取り組むべき部門について質問をしたところ、「企業経営リスクとして捉え、自分の所属部門が主体的に対策すべきだと考えている」(22.0%)、「自分の所属部門とマーケティング部門で協力して取り組むべきリスクだと捉えている」(25.0%)の両者を合わせ、自部門が関与すべきと考える割合は47%に上りました(図3)。

サードパーティークッキー規制の認知率は6割、そのうち内容認知率は3割強、理解度には部門間の差も
Webブラウザを提供する各社が、2022年までにネット利用者の閲覧履歴の追跡などに使っているトラッキング用サードパーティークッキーを段階的に廃止する方針を表明するなど、デジタル広告とプライバシー保護の両立について関心が高まっています。サードパーティークッキー規制についての認知率については58.5%となり、そのうち本人の同意を得ないサードパーティークッキーが取得できなくなるといった内容まで認知しているのは回答者の35.5%でした(図4)。また部門別にみると、管理系部門勤務者に比べ、広告系部門勤務者のサードパーティークッキー規制の内容認知率は13ポイント高い42%となっており、理解度には部門間の差が見られます。

個人情報保護法改正における今後の影響については、「非常に影響があると思う」(12.0%)、「ある程度影響があると思う」(45.0%)となっており、約6割が影響があると判断しているものの、改正個人情報保護法の対策について「既に対策を講じている」のは15.0%に留まっており、個人情報保護法改正における今後の影響について認識しつつも、実際に具体的対策に乗り出せていない企業が多いことが分かりました。

JICDAQ認知率は約3割だが、その設立趣旨や活動内容への賛同率は高く、JICDAQへの期待は大きい
デジタル広告不正問題に対処すべく設立された業界団体である一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)については、「どんな活動をするのか詳しく知っている」(5.0%)、「活動内容の概略は知っている」(10.5%)、「活動内容は知らないが、団体が設立されたことは知っている」(18.0%)となり、認知率は約3割に留まりました。一方でJICDAQの理念や活動に対しては、約7割の人たちが賛同の意を示し、デジタル広告品質改善への期待感の高さがうかがえます。

■調査概要
本調査は、デロイト トーマツ グループにて、広告・メディア投資における企業の実態の把握を目的として実施しました。詳細レポートでは、不正広告への取り組み内容や、マーケティング投資の透明性向上の推進者などの状況を明らかにし、広告・メディア投資における課題を分析しています。詳細レポートについては下記までお問い合わせください。なお、本調査結果に係る割合は小数点第二位以下を四捨五入しており、合計値が100%にならないものがあります。

「広告取引に関する広告主実態調査2020」
調査目的:デジタル広告不正問題に対する意識と対応実態を把握するための基礎調査
調査期間:2020年12月8日~11日
調査対象:全国の従業員規模5,000人以上の企業でTVCM、Web広告を実施している企業、前述企業の広告系部門および管理系部門に所属しているマネージャークラス以上の方
調査手法 :Web
スクリーニング調査:10,000サンプル以内、本調査200サンプル

出典:PR TIMES https://prtimes.jp/