~大手各社の「新料金プラン」に対する反応から読み解く~

■生活に欠かせないインフラである携帯電話(スマートフォン)
今回は、私たちの生活に欠かせないインフラのひとつである携帯電話(スマートフォン)をテーマに取り上げます。

政府の要請により、携帯電話(スマートフォン)利用料金の引き下げが進められた結果として、携帯電話大手3社の新サービスとしてNTTドコモの「ahamo」、auの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」が2021年3月から順次提供を開始、申し込みが殺到するなど話題を集めたのは記憶に新しいところです。
これらのプラン(※注:本稿では以降「新料金プラン」と表記)は、「申込やサポートがオンラインのみ」「データ容量は月20GB」「月額3,000円程度」といった共通する特長を持っているほか、料金プラン体系もシンプルとなっているために、多くのユーザーの興味を引いたものと考えられます。
携帯電話(スマートフォン)は不可欠なインフラである一方、契約内容や利用状況次第ではそれなりの金額になるものであり、家計における支出割合も無視できないレベルになっているというご家庭も結構あるのではないでしょうか。ここ10年ほどでのいわるゆ”格安スマホ”の隆盛もあり、自らの選択で料金を抑えられる環境は整備されてきたものの、格安スマホの契約率はまだ2割程度と言われており、ここからも今回の「新料金プラン」が待望視されていた様子がうかがえそうです。

CCCマーケティング総研では、この「新料金プラン」に関するアンケート調査を2021年4月21日~27日にかけて実施しました。これは各社による提供開始からおよそ1ヶ月以内というタイミングになります。このアンケートで得られた1,241人(※)のT会員の皆様の回答から、「新料金プラン」に対する生活者の意識や行動を読み解いていきたいと思います。また、その際の視点として料金引き下げの”先輩格”とも言うべき「格安スマホ利用者」との比較も取り上げていきます。
※全1,241人の内訳
「新料金プラン利用者・申込者」400人、「3大キャリア旧プラン継続者」400人、「格安スマホ契約者」441人

  • 3者とも「親」回線からの流入が大半だが、格安スマホからの流入はahamoが優勢

まず初めに、「新料金プラン」市場の出現によって、生活者の選択にどのような動きが起こっているのかを大まかに俯瞰してみたいと思います。
<図1>は、アンケート回答者のうち「新料金プラン利用者・申込者」400人について、「ahamo」「povo」「LINEMO」それぞれのサービスへの乗り換え元回線を集計したものです。400人というサンプル数、かつサービス開始1ヶ月程度であることから、あくまで速報値としてご覧いただければと思いますが、これによると3者とも「親」にあたる回線からの流入が8~9割近くと大半を占めていることがわかります。

この中では”ahamo ← NTTドコモ”が3者の中で最も低い76%という数字になっていますが、これはNTTドコモから他社に流出しているのではなく、むしろ他社からahamoへの流入が多いために相対的にNTTドコモからの流入が少なくなっていることを示しています。特に、格安スマホ他からの流入が30人と多い点が目を引きます。本来は大手を利用したかったが価格差のために格安スマホを選んでいたという人が、「新料金プラン」で大手携帯会社との契約に回帰するという流れの一端を示しているのかもしれません。
その他の回線では、LINEMOも他社からの流入が比較的多く認められる一方で、povoでは他社からの流入よりもauから他社への流出が上回るという結果になりました。

  • プラン変更による金額インパクトは、年間3~6万円くらいが中心か

続いて、料金プランの変更が、支出の抑制にどれくらい貢献するのかの推定を、簡単ですが行ってみたいと思います。<図2>は月額料金の分布を示したもので、上段は新プラン利用者、下段は比較対象として格安スマホ利用者の集計となります。

上段の青色のグラフは、新料金プラン利用者における直前回線の月額料金を示しています。さまざまな価格帯に広く分布していますが、ボリュームゾーンは6,000~8,000円あたりにあるようです。また平均(加重平均)は6,477円となりました。新料金プランの月額は3,000円程度ですので、削減効果としては概ね1ヶ月で3~5千円、年間で3~6万円くらいのインパクトであると言えそうです。
一方、比較対象の格安スマホ利用者(下段)については、直前回線に関する質問が人によっては数年前のことになるためその回答に注意が必要ではあるものの、ボリュームゾーンが6,000~8,000円という結果は上段(新料金プラン利用者)と変わらないものでした。なお平均金額は5,552円と、上段よりも約1,000円低いのですが、これは格安スマホ利用者には月額1万円以上を使っていた人が元々少なかった(計6.5%、新プラン利用者では計16.5%)ためとみられます。
いずれにしても、回線変更による年間の削減効果は3~6万円くらいが中心であると見られます。これが家族人数分、さらには継続的に何年も積みあがっていくと、やはり家計支出削減の効果はかなりの大きさになってくると言えそうです。

  • ”料金が下がったことによる気持ち”に見え隠れする「新型コロナ」の影響とは…

続いて見ていただくのは、「電話料金が下がったことによって、生活者はどのような気持ちを持つのか」についての集計です。<図3>は、新料金プラン利用者・申込者(紫色のグラフ)にその気持ちを尋ねた質問のMA回答で、比較対象として格安スマホ利用者における申し込み当時の気持ちも茶色のグラフで表示しています。

概ねグラフの出入りの形は似ているのですが、「倍率」の欄を見ると新プラン利用者・申込者の回答率が格安スマホ利用者を下回っているもの(水色)や、逆に大きく上回るもの(オレンジ色)が散見されることが分かります。
その内容を見ると、前者(比較対象の1.0倍未満)では「純粋にうれしい」「得した気持ちになれる」といった料金が下がったこと自体に対する喜びのようなものが見て取れるのに対して、後者(比較対象の1.5倍以上)では「生活必需品の購入に回す」「ゆとりを持てる」「何かを我慢する必要がなくなる」といった切実とも取れる内容が多く挙げられていることがわかります。中でも「家計へのインパクトは大きい」は50%を超える高いスコアとなりました。
価格差について言えば、今回の新料金プランと過去の格安スマホにおける料金減のインパクト自体はほぼ同等でした。にも関わらず、今回の新料金プランでは切実な気持ちが相対的に高くなっているのはなぜでしょうか。この点に関して、我々は2つの理由を考えました。
① 格安スマホ利用者は、格安スマホの導入において、いわゆるイノベーターやアーリーアダプターに当たるため、回線変更(による料金ダウン)という行為そのものへの関心度が比較的高かった
② 新料金プラン利用者・申込者の意識の方に、新型コロナウイルス感染症による昨今の経済状況・先行き不透明感による影響が出ている
残念ながら今回のアンケートの結果だけでは①②の影響度の大小を分析することは叶いませんが、それでもやはりこのご時世において②は無視できない大きな要素であると言えるでしょう。

  • まだまだ多数を占める旧プラン継続者の今後の動向は?

さて、冒頭で新料金プランへの流入の大半が「親」回線からのものであることをご紹介しました。そのことは、新料金プランの利用が今後さらに広がっていくかどうかにおいて、「親」回線利用者の動向が大きな鍵を握っていると言い換えることもできそうです。
<図4>は、大手3社の旧プランを継続利用している人における新料金プランへの興味関心度、および関心有無それぞれの層の特徴や意識をまとめたものです。

これによると、まず新料金プランへの関心の有無がきれいに二分していることが分かります。
この両者を比較すると、関心がない層の方が、平均利用年数がやや長く、平均月額料金がやや低いという傾向が見られました。関心がない理由を見ると、キャリアメール・各種割引・店頭サポートといった従来受けていたサービスがなくなることが障壁になっていることがよくわかります。
一方で、関心がある層ではやはり料金の安さが圧倒的な関心を引いているほか、プランそのものの良さや話題性も関心理由になっていることが分かります。何らかもう一押しがあることで、比較的容易にその壁を乗り越えてくるかもしれず、この層が今後どのような動きを示すのか注目していきたいところです。

今回は、スマートフォンの新料金プランに関する生活者の意識や行動について、さまざまな角度から読み解いてみました。今回の件を単に「月額料金の引き下げ」ではなく「家計に直結する実質的なインフラ値下げ」と捉えることによって、新たに見えてくる部分があったのではないでしょうか。

【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:男女・20~69歳
サンプル数:1241サンプル(新料金プラン利用者・申込者400人、3大キャリア旧プラン継続者400人、格安スマホ契約者441人)
調査期間 :2021年4月21日(水)~4月27日(火)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)

出典:PR TIMES https://prtimes.jp/