ビジネスプロセスのフレームワークはいくつかありますが、中でも最も有名なフレームワークは「PDCA」です。対してビジネスプロセスのフレームワーク一つで最近注目を集めているのが「OODA(ウーダ)」です。まずは注目の「OODA」を簡単にを理解してみましょう。

■「OODA」とは

「OODA」は意思決定理論で、結論を言うと「PDCA」とはそもそも利用目的、そしてプロセスが異なるものです。つまり比較すること自体が間違っています。初めにそれを理解してください。

その上で解説を進めますが、「OODA」は以下のプロセスの略称となっています。

  • Observe:監視(見る、観る) 
  • Orient状況判断 (分かる、解る) 
  • Decide:意思決定 (決める)  
  • Act:行動 (実行)

これは米国空軍パイロットで、しかも教官であったジョン・ボイトが提唱した「意思決定理論」です。ジョン・ボイトが経験した航空戦において監視、状況判断を基盤にして、即時に戦術を決定する意思決定プロセスを理論化したものです。

つまり「OODA」は、主に戦場の現場レベルで活用される戦術の「意思決定理論」です。「PDCA」はこれとは違って、改善プロセスです。ビジネスに置き換えるとわかりやすいかもしれません。例えばそれぞれの活用シーンは以下の通りです。

●「OODA」の活用シーン

例えば顧客を前に営業を展開する場合は「OODA」をフル回転させる必要があります。時間をかけた分析や試行錯誤ではなく、瞬時の状況判断力と決断力が物を言います。私の個人的見解ですが「OODA」はプロセスも重要ですが、経験値、個人が持っている情報量も重要で簡単に使いこなせるものではないと感じています。

ただ、多方面で言われているようにAI開発に於いて、おそらく「OODA」は重要な思考プロセスだと思われます。

●「PDCA」の活用シーン

例えばキャンペーン等は、キャンペーンを計画、実行し、結果を評価して次回に向けて改善させる必要があります。

つまりマーケティングや企業戦略、事業計画などの目標到達における重要なフレームワークです。PDCAも高速性は必要ですが、一つ一つのプロセスを確実に実行することが重要で、手抜きなく深堀して回すことで目標達成が行えると考えます。

■「OODA」をさらに理解しよう。

●Observe(監視)
Observeはもともと軍事戦術の意思決定理論であるため「監視」としましたが、ビジネスでは「観察」の方が分かりやすいでしょう。
例えば顧客や市場環境を観察して、顧客の課題、解決したい問題、欲している事、立場や人間関係を理解し相手を把握します。簡単に言えばペルソナを作るイメージです。


●Orient(状況判断、方向づけ)
Orientは前工程のObserve(観察)で集めた情報を元に分析を行い、次の行動予想をします。その行動予想から自身がどうすべきか、何をすれば目的が達成できるかを判断します。簡単に言うとカスタマージャーニーを作るイメージです。

●Decide(意思決定)
DecideはOrientによって状況判断した方向を元に、いくつかのプランを立案し、最も可能性があるプランを選択します。またそのプランがダメだった場合の代替案の準備も大切です。よく映画で「プランBに移行しましょう」というセリフがありますね。こうした準備も重要です。

●Act(行動)
ActはDecideで立案されたプランに従い行動します。またプランA~Bまで実行し、結果が悪ければさらにループを回します。

■「OODA」の使い方をさらに極めよう

●なぜ「OODA」が注目されるのか

実は、OODAのプロセスは昔から無意識に使っていたと思います。例えば以下の様なシーンを思い浮かべてください。まさにOODAです。

●例えば新商品開発を例にすると

例えばあなたが、スーパーのお弁当開発担当だったとします。新しいお弁当を開発するにあたって一般的には以下のプロセスを踏むと思います。

自社のスーパーのお惣菜の売れ筋、他社のスーパーのお弁当の種類と売れ筋、ファミレスメニュー、TVやグルメ情報などなどを観察しませんか?つまり観察は当然行っています。

そこから、ターゲットを想像し現状売れる確証があるお弁当、つぎにトレンドがありそうなお弁当のメニューを検討しますよね。つまり状況判断をしています。

そしていくつか試作品を作り、プランA~Cまでの3つを用意してみんなに試食してもらい、一つの商品を絞ります。つまり意思決定をします。

最期に決まったお弁当プランの実行です。

こうみると変わったことではないと理解できますよね。ただ「ああ、なんだ簡単じゃないか」で済ませてはいけません。フレームワークは何のためにあるのか。それはプロセスにヌケ漏れが起きないようにするガイドラインです。フレームワークをおろそかにすると、例えば「自社のスーパーのお惣菜の売れ筋、他社のスーパーのお弁当の種類と売れ筋、ファミレスメニュー、TVやグルメ情報」等の観察をしないで自分が好きなお弁当を作ってしまいます。

●非常に難しいプロセス「状況判断」と「意思決定」

この「OODA」というフレームワークは誰でも使いこなせるというものではないと思います。例えば「PDCA」や「3C」「SWOT」というフレームワークは、プロセスを覚えれば比較的簡単に使いこなせます。ただ「OODA」は経験や情報量が物をいうプロセスがあります。それが「状況判断」と「意思決定」です。

米国空軍パイロットで教官であったジョン・ボイトが負けなかった理由は「OODA」を常にフル回転させていたことも重要な要因ですが、多くの空戦を経験し、その経験から正しい「状況判断」が行え、40秒というスピードで「意思決定」が出来たと思います。この点は理解しておきましょう。

※ジョン・ボイトは空戦の於いて不利な位置から開始して40秒で逆転したと言われている

■「PDCA」と「OODA」の違い

これまでの説明で「PDCA」と「OODA」違いが分かったと思います。そもそも比較対象ではなく、どちらを選ぶかという発想の物ではありません。利用シーンが違うのです。それを把握するために「PDCA」を少し復習しましょう。

●PDCAとは

PDCAは実は日本で多く使われているようです。PDCAは以下の略称です。

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • Check(評価)
  • Act(改善)

この4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善するフレームワークです。生産技術や品質管理などの継続的改善が必要な場面で活用され、またビジネス計画、戦略などの目標達成が必要な業務での改善プロセスとしても利用されています。「日本で多く」と前記しましたが、おそらくトヨタ等で活用され広まったのではないかと勝手の想像しています。

●「PDCA」と「OODA」の利用業務

●「PDCA」を利用する業務

主に戦略、数値の達成や品質向上などを極める業務等の目標達成に向いていると思います。例えば

  • マーケティング戦略と改善(目標達成)
  • 事業戦略、計画の改善(目標達成)
  • 商品や製品の品質向上(目標達成)

●「OODA」を利用する業務

主に数値では表せない業務、クリエイティブな業務、現場意思決定などマーケットアプローチに向いていると思います。例えば

  • 新規事業開発(マーケットアプローチ)
  • 新製品、新商品開発(マーケットアプローチ)
  • 営業部の営業方針、方向性の共有(マーケットアプローチ)
  • デザイン等のクリエイティブプロセス(マーケットアプローチ)
  • AIの思考プロセス

かなり私の個人的解釈が含まれていますが、どうでしょうか。今日からそれぞれ使い分けてみませんか。また間違っている点があれば是非ともご指摘ください。よろしくお願いします。