「マーケティングテクノロジー」とは

「企業マーケティングの活動全般を支援するテクノロジー(ソリューション 、システム、サービス)」

の事を言う。略して「マーテク」とも言われている。

「マーケティングテクノロジー」は普及しているキーワードのように感じるが、案外と狭い世界のみで知られている。本来はもう少し知らているべきだと思う。なぜならば後でも述べるがITシステム分野で最も伸びているのがマーケティング関連であり、マーケ部門のIT予算がIT部門の予算よりも上回っているという事実があるからだ。

この「マーケティングテクノロジー」 さらに噛み砕くと、企業のマーケティングは大雑把に以下の活動と言える

  • 「見込み客を発掘」  (入口)
  • 「見込み客を育成」  (育成)
  • 「優良見込み客を獲得」(ゴール)
  • 「顧客の管理」

この入り口からゴールまでのマーケティングの具体的アクションとしては

  • 広報、宣伝活動
  • マーケティングコミュニケーション活動
  • 営業、セールス活動
  • カスタマーサポート活動
  • 戦略&データマネジメント

などにより行わているが、このアクションの管理、支援を行うソリューション 、システム、サービス が マーケティングテクノロジーと呼ばれるものだ。かなり幅広い分野であるが、ここ数年で急速に普及している。

■「マーケティングテクノロジー」という言葉は「カオスマップ」により波及

実は「マーケティングテクノロジー」というワードがメジャーになったきっかけは chiefmartec.com が毎年公表している「Marketing Technology Landscape Supergraphic 」というテクノロジーマップが影響している。

通称「マーケティングテクノロジーカオスマップ」と呼ばれている。マーケターなら必ず見ておいた方が良い。全システムを見るのはさすがに無理があるが、カテゴリ分類だけでも理解しておくと全体像が見やすくなる。

●カオスマップはカオス状態のマッピング

「Marketing Technology Landscape Supergraphic 」は当初は500程度のソリューション数であったが、最新は7500を超え始めている。まさに「カオスマップ」なりつつある。普通に見ると途方に暮れてしまう。

見方としてお勧めしたいのは、前期の通りカテゴリ分類を理解して俯瞰したのちに必要なカテゴリを集中してみると効率的に探すことが出来る。

■IT分野では今後、もっとも重要な分野でもある。

「マーケティングテクノロジー」の重要性を改めて知って頂きたい。 企業のIT活用という視点で歴史を紐解けば、最初は基幹系システム( 入出庫、会計処理、生産管理 等)から発展をとげて、情報系(経営戦略、販売戦略、コミュニケーション)などに拡大した。

今後はマーケティング系に進む。 マーケティング系は情報系とも言えるが、これまでの基幹系と情報系は社内の保有データを管理するシステムであった。しかし「マーケティング系」は、見込み客の発掘から顧客獲得まで取得しながら管理する「データマネジメントとコミュニケーション機能が発展した」ソリューションであるため、分けた方が良いと考える。

■マーケティングテクノロジーが今一つピンと来ていない方も多い

残念ながらマーケティングテクノロジーが今一つピンと来ていない方も多いと感じる。原因は3つだと考えている。

  • 「取り扱いジャンルが広い」
  • 前記に記したように「7500を超えるソリューション」が存在し、混沌としてきている
  • 自社の事業活動に、どのソリューションを選択すれば効果が期待できるのかさっぱりわからない

そもそもMA,SFA,CRM,DMP,CDP,DSPという言葉が、どうにも難解でこうした用語で全体像が理解を難しくしている。そして例えばコンテンツマーケティング等のように「●●マーケティング」という言葉の混在も混乱を広げている様に感じる。

■マーケティング用語を整理しよう。

前記の通り「マーケティング」が氾濫している。「デジタルマーケティング」「インバウンドマーケティング」「Webマーケティング」・・・・などの様に混沌としている。いきなり「テクノロジー」分類の整理を行うと混乱をきたすため、初めに「マーケティング用語」の再整理をしてみよう。色々な考え方があるが、私の独断で整理をしているのでご容赦願いたい。

●マーケティングのから整理

マーケティングを整理する上で、軸を「デジタルマーケティング」に置かせて頂く。

そのうえで基本的にマーケティングは大きく

  • アウトバウンド(企業側の広告等プッシュ型)
  • インバウンド(カスタマー側の気づき型)

に分けられる。それらをコントロールするデジタルマーケティングで括られる。さらにデジタルマーケティングはオンラインに限らずオフラインも含まれて来ている。

この広義的デジタルマーケティング分野で利用されるシステムがマーケティングテクノロジーの範囲となる。

またデジタルマーケティングのコミュニケーション機能ごとにWeb、メール、SNS、動画、チャットなどのマーケティング活動が行われ、その活動の武器になるものがコンテンツ マーケティング となる。

さらにアカウントベースドマーケティングという手法も最近ちらほら聞かれるが、このように機能や手法ごとのマーケティング分類が混在している。

■ 「ターゲットの認知行動ステップ」と「企業のマーケティングアクション」で「マーテク」が理解できる。

● 「認知行動のステップ」=「AIDMA(アイドマ)」

「AIDMA(アイドマ)」は聞いたことがあると思う。サミュエル・ローランド・ホールが著作中で示した広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスだ。

かなり古い概念であるが、じつは現代のマーケティングのおいて最も重要なフレームワークだと私は考えている。さらに言えば「 マーケティングテクノロジー」を理解するためにも絶対に必要な概念である。

なぜならマーケティングテクノロジーは「AIDMA(アイドマ)」 の上流から下流までカバーしているシステムだからである。

ここでポイントになるのが 「AIDMA(アイドマ)」は

  • Attention(注意)
  • Interest(関心)
  • Desire(欲求)
  • Memory(記憶)
  • Action(行動)

以上のステップで分類されているが、この分類に拘る必要はない電通はインターネット活動に合わせて「AISAS」と新分類を作っている。また企業やサービスによりターゲット活動に合わせたステップを検討すべきだと思う。

ちなみにここでは「マーケティングテクノロジー 」を簡単に理解して頂くために以下の分類とさせて頂いた。

● 「企業のマーケティングアクション」

企業のマーケティングアクションについては先に説明をしたが、改めて確認をする。

  • 広報、宣伝活動
  • マーケティングコミュニケーション活動
  • 営業、セールス活動
  • カスタマーサポート活動
  • 戦略&データマネジメント

これらアクションにより企業はマーケティング活動を行っていると先に記述したが「マーケティングテクノロジー」もこの各アクションを支援するために存在している。

■「マーケティングテクノロジー」の整理

「マーケティングテクノロジー」 の理解には「ターゲットの認知行動ステップ」と「企業のマーケティングアクション」が重要と記述したが、その理由が以下にある。つまり各テクノロジー(ソリューション、システム、ツール)は、横軸の「ターゲットの認知行動ステップ」と縦軸の「企業のマーケティングアクション」 ですべて整理が可能となる。

各テクノロジー分野の解説さらに進める。

●データマネジメント

あとで重要性に気が付くことが多いが、マーケティングシステムとして基幹的なDBが必要となる。なぜか?

データが分散すると、それぞれが補完することなく縦割り情報管理となり結果的に間違った情報が組みあがってしまうケースが多いからだ。プライベートDMP/DWH/DataLake/CDPなどで統合管理を行うことにより真のマーケティングマネジメントが出来るようになる。しかしCRMを中心にMA等をトータルに管理するシステムもあるので導入システムにより様々な検討が必要だ。

●集客・広告

集客、広告出稿などは費用対効果の高さが求められる。如何に効率よく見込み客を発掘するかにすべてがかかっている。 SEOツール、DSPなどはこうした 集客、広告出稿活動を効率化して費用対効果の最適がを行うツールとなる。業種やターゲットにより最適なシステムを選択する必要がある。

●マーケティング

見込み客の集客ができれば、効率の良い営業活動を行うための準備が必要となる。また顕在な見込み客 の発掘だけではなく、潜在的な見込み客を顕在的な見込み客に育成することも最重要なミッションと言える。

そのための見える化ツールとしてWeb解析/各種解析ツールが必要となる。

さらにSNS、メール、チャットツールなどを活用し 潜在的な見込み客を顕在的な見込み客に育成 することになる。

こうしたコミュニケーションを自動的に行うマーケティングオートメーションもいずれは必要なシステムと言える。こうした活動で質の高い見込み客をリスト化する。

●セールス

マーケティングで質の高い見込み客リストができたとしても効率的なセールス活動、そのマネジメントを行わないと効果は半減する。

そのためにSFAも検討も重要な要素だ。最近では各企業ともSFAの導入はかなり進んでいる。その場合、このSFAシステムと相性が良いマーケティングシステムの導入検討も重要だ。

●カスタマーサービス

基本的にはCRMであるが、各システムによりMA,SFAとCRMのマネジメント範囲がダブル場合もある。この点はよく見極めながら顧客の契約維持を図るためCRMの検討も必要となる。

●各種プラットフォーム

継続的な改善と発展のため、さらにコンテンツマーケティングの実践にはCMSも重要なシステムとなる。サービスによってはIoTを連携させながらCRM的な管理を行うことが競争力になる場合も多い。

こうしてみると、どのソリューション分野も、今後は必要となる企業は多いと思う。そうマーケティングテクノロジーは気づきが重要である。いまや企業規模に関係なく各企業ともデジタルマーケティングが進化を急速に遂げている現在、必要な ソリューション に早く気づいてしまった企業が先行して競争力を手に入れる事になる。

■1つのソリューションでは効果が期待できない場合も

本文中に触れてもいるが1つの ソリューション導入 で解決できるものもあれば複数組み合わせないと、マーケティングのデータドリブンが実現しない場合ある。逆に言えば、この数年のマーケティング進化で複数のソリューションが必要になるケースが出てきた。

例えば極めて一般的な事例で説明をする。以下のシステム要件の場合を想定してみよう。

  • 顧客の発掘から契約まで管理したい。
  • そして契約後の管理までシームレスに行いたい。
  • 複数のシステムを導入する場合は、効率の良い活動を行うため縦割りの独立データベースが複数存在することは避けたい。

この場合は単純にはMA(マーケティングオートメーション),SFA(セセールスフォースオートメーション),CRM(カスタマーリレーショナルマネジメント)CDP(カスタマデータプラットフォーム)が必要となる。一つのソリューションですべて管理できるツールも存在するが、複数のソリューションを組み合わせて実現する場合もある。

ただし当初から、これらをすべてを検討し導入するのは間違いである。順番に必要なものから導入を始めてトライ&エラーの中でベストソリューションを見つけるべきである。